わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
レイが選んだ店は、串焼きのお店とは雰囲気が違っていた。
テーブルに着いてるお客はみんな上品な感じで、談笑しながら料理とお酒を楽しんでいる。
テーブルをはさんで向かい合って座るリリアンヌの前にはスイーツのお皿が置かれ、レイの前には肉料理が置かれている。
レイは優美な所作でナイフとフォークを扱いながらリリアンヌに尋ねた。
「で、どうして窓から出入りしてまで、宿を抜け出したんだ?」
「連れと一緒だと、禁じられることが多いんです。もっとこの街をゆっくり見たいのに」
「それは、リリが心配だからだろう。従ったほうがいい」
「・・・はい。分かっています」
心配なのは重々分かっているが、嫁入りするリオン王国のことをもっと知りたいと思っている。
時は刻々と進み、人々の風習も移り変わっていくもの。学習するだけでは知りえないことが沢山ある。
現に、宿場町の名物がリオン鳥の串焼きであるなど、初めて知ったことなのだから。
アベルと結婚すればいずれ王妃となるのだ、国の色々を知らない王妃など、国民が尊敬するはずもない。
リリアンヌは母であるミント王国の王妃を思い浮かべた。
王妃は国民のことをとても理解しており、チャリティなど政治とは違う部分を見、常に暮らしやすいように気を配っているのだ。