わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
久しぶりに弓矢と動く的を見てリリアンヌの心が騒ぎ、腕がウズウズする。
「的に当てればいいのですか?」
愛用の弓矢とは違うけれども、動く的を射るのは得意だ。やればできそうな気がする。
「レイ、やってみたいです」
わくわくする気持ちを隠さずに見上げれば、レイは少し苦笑いをした。
すると、近くにいた男性が大口を開けてガハハハ!と笑った。
「お嬢さんには無理さ、止めときな。今の男だって一個しか当てられなかったんだぜ」
「この街の警備隊長にもできねえんだぜ。お嬢さんの腕じゃあ一個も当てられんだろうよ。恥ずかしい思いをするだけさ」
違う男性も加わって、そろってガハハハハ!と笑う。
それになぜか周りに人が集まってきて、止めときなーと口々に言った。
「やってみなければわかりません!もしも全部当てたらどうしますか?」
「おおーお嬢さん、見かけによらず威勢がいいね!よっしゃ、一個でも当たったら、おじさんが賞金を出すよ!」
「俺も出すぜ!一個につき百ペクスだ!」
すると芋づる式に「俺も」「俺も」と声が上がる。
店から出る賞金は五百ペクスで、男性たちの出す金額の方がはるかに上回る。
皆リリアンヌには無理だと決めてかかっているのだ。
「リリ、止めておけ」
レイが命じるように言うけれども、周りの客たちのノリが増してしまいどうにも止められず、リリアンヌは遊びの舞台へ躍り出た。