わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
なんだかあまり眠った気がしない。
城のベッドのようにフカフカとは言えないけれど、ここは十分にくつろげるはずだったのに。
遊技場から帰ってからずっと、目を閉じても開いてもレイのことが頭に浮かんでしまい戸惑っていた。
昨夜の賞金を隠した籠に目をやれば、またレイの顔が浮かんで胸がドキドキする。
これはきっと、昨日の出来事が皆にバレると困るからに違いない。
それに近年まれにみる楽しい経験をしたから、一緒にいたレイのことが頭に浮かぶのだ。
そう自分を納得させると、今度は違うことが気になった。
そういえば、賞金はきちんと底板に隠れているだろうか。
昨夜平らに入れたつもりだけれど、板がぷかっと浮いて斜めになっていたら二重底だと気づかれてしまう。
それは、困る。
突然焦燥感にかられ、ハンナたちが来ない今のうち!と、急いでベッドから下りて確認すると、なんと紐がにょきっとはみ出ていた。
さらに、何枚か紙幣の端が見えている!
「大変!」
焦りつつも早速直して、何度も見直して蓋をする。
「確かめてよかったわ」
ふうっと、心底安堵しているとドアがノックされ、リリアンヌの心臓が喉元まで跳ね上がった。
「リリさま、起きてらっしゃいますか?」
慌ててベッドまで戻り、ドキドキする胸を宥めて平静を装いドアの向こうに声をかける。
「ええ、起きているわ」