わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
ドキドキする胸を抑えるメリーの前で、トーマスはバッと服を脱いで上半身裸になった。
逞しい胸と腹筋が露わになり、メリーの顔が一気にゆで上がる。
「あ・・・あ・・・」
すると、硬直して動けない初心なメリーの様子を見兼ねた他の騎士たちから声が上がった。
「トーマス、いきなりそれはないだろう!」
「せめて後ろを向けよ!」
やんややんやと声がかかり、トーマスは苦笑いしながらも布で体を拭きメリーに返した。
「メリー、ありがとう」
「いえ・・・どうしたしまして」
受け取った布をぎゅっと握りしめ、逃げるようにトーマスの元から去った。
リリアンヌたちのところに帰ってきたメリーは息も絶え絶えで今にも倒れそうだ。
「メリー、大丈夫?」
ハンナが支えると、メリーはふぅっと大きく息をついた。
「はい・・・でもやっぱり、トーマスさまは、素敵です」
「そうよね、メリーはよく頑張りましたわ!次は、お礼を渡さなくては!」
「はい。がんばります」
お礼を購入したもののなかなかトーマスに声がかけられず、メリーはまだ渡せていないのだ。
旅の終わりまでに渡しましょう!とハンナとふたりで手を握り合い、一緒に決意を固めている。
布を渡すだけで緊張するのが乙女心。リリアンヌはまた一つ、勉強をしたのだった。
「うむ、いいだろう」
洞窟の極入り口付近に座り、メリーのかわいい恋心の一幕をチラ見しつつも空模様をにらんでいたマックは、スッと立ち上がった。
「リリさま、そろそろ出発できそうです」
止んではいないものの雨は弱まっており、一行は再び動き始めた。