わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!


目をつむり頬を押さえてため息をつくメリーは、洞窟でのことを思い出すかのように夢見る表情をする。

それに、野原ではリリアンヌのことを第一に心配したが、知らせに走った自分にも怪我はないか気遣ってくれたと吐息混じりに話す。


「あの方は、分け隔てがないのですわ・・・」


メリーは、またまた熱のこもった深い息を吐いた。

リリアンヌはトーマスの容姿を頭に浮かべた。

今までまったく考えたことがないが、確かに彼は甘い顔つきで背も高く見た目がいいと言える。

そのうえ性格がいいとなれば、乙女心がころんと傾くのも無理がないかもしれない。

おまけに強く逞しいとは、兄王太子顔負けにレベルが高いではないか。

ふと、アベルはどんな感じなのだろうと思う。

いろいろ想像してはいるが、もしかしたらショックを受ける容姿かもしれない。

でもたとえどんなお方であっても、尊敬し一生お慕いしていくと教育されている。

勿論そうするべきだと思っているが、ここのところは、本当にそうできるのか不安になっていた。

無意識に、花のネックレスをぎゅっと握りしめる。


「リリさま?」


胸の辺りを押えてため息をつく主を心配して、ハンナが顔を歪めた。

リリアンヌはネックレスから手を離し、慌てて笑顔を作ってなんでもない風を装う。


「あ、そうだわ。ハンナもトーマスのような人がいいの?」

「いいえ、リリさま。私は、誰にでも優しいよりも、自分だけに優しいお方がいいですわ」

「ハンナだけに、優しい人?」

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