わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
「それで、あんなことになったと言うんだな?」
「・・・はい」
「どうして自らを危険にさらすんだ!」
決して怒鳴られているわけでないけれども語気の強い声はビシッと胸に突き刺さり、リリアンヌは思わず姿勢を正した。
「は、はいっ!でもわたくしは、皆に迷惑をかけるのは嫌なのです!」
王女としては、国に迷惑をかけるわけにはいかない。
人質になり、身勝手な要求を突きつける輩の駒にはなりたくない。
それに辱めを受けるくらいなら、潔く死を選ぶ。
「たとえそうだとしても、お前は無謀過ぎる!あの場合はおとなしく助けがくるのを待つべきだ。まわりに強い男がたくさんいただろう?」
「・・・あ」
それはまさにレイの言う通りで、一言も反論できない。
マックたちがすぐそばにいたのに、彼らを信用してない言動をしたことになる。
また余計なことを言ってしまったのだ。
「ごめんなさい」
「まあ、いい。とりあえず無事だったんだから」
これからは気を付けろと、ふわりと頭に手が置かれて見上げたブラウンの瞳に、優しくなった鳶色の瞳が映る。
その急な変化に小さな胸がトクンと鳴る。
トクトクと高鳴る鼓動が聞こえてしまいそうで離れようとするけれど、レイの手が頬を包み込んでしまい動けなくなる。
「正直、感情を抑えるのはキツイな」
「え?」