わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
ふわっと微笑んだレイの唇が近づき、リリアンヌの額のあたりで小さなリップ音を立てた。
離れていく唇が口角を上げ、鳶色の瞳はまっすぐにブラウンの瞳を捕らえる。
「・・・あ、あの、今何を」
「仕置きだ」
「え?・・・どういうことですか?」
「リリ、確認するが。賊はリリが弓が得意なことを知っていたんだな?」
「え?は、はい。知っていました」
「そうか、有益な情報をもらった。俺は急いで宿場街に戻らねばならん。リリは、腕を大事にしろ。いいな」
リリアンヌの質問には答えず、ちょっぴりイジワルな笑顔をみせ、レイは素早く馬車から降りていった。
「・・・仕置き?」
一人残されたリリアンヌは熱を持った額にそっと触れてみる。
今、確かに、柔らかなものがここに触れたのだ。
頬に触れられても抗うことができず、拒絶する言葉も出なかった。
「わたくしは、どうしてしまったの・・・?」
抑えきれない思いが溢れてくる。
それを止めるように、花のネックレスを手のひらでぎゅっと抑えた。