わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
リオン王国
しとしとと降り続いた雨がようやくあがり、雲の間に青空が顔を出す。
太陽が山の木々をほのかに照らし、木の葉から滑り落ちる雫が日の光りを反射して宝石のようなきらめきを放って地に消える。
濃い緑をキャンバスにそこかしこで雫が輝く様は、まるで夜空の星が瞬いているかのように美しい。
空には虹も出て空気が清々しく、ミント王国の一行は気持ちも新たにして動き始めた。
騎士たちは少しばかり怪我をしているが隊列は変わらずにトーマスを先頭に行く。
ただ違うのは馬車にはリリアンヌ一人が乗り、メイドたちは荷馬車の方にいること。
賊の襲撃を受けた被害は思いの外大きく、道に散乱していた物を荷馬車に戻すときに泥を粗方落としたものの、全部を整理しきれないでいる。
メイドが馬車に乗ってのんびりとお喋りしているわけにはいかず、リリアンヌの元気がなくてとっても心配だったが、ここは仕事をしなければ!とハンナたちはせっせと片づけをしていた。
自分たちのものはメイド服さえ無事ならばいいが、王女のものはそうはいかない。
奥まったところにあったパーティ用のドレスは無事だったものの、普段着用する予定のドレスを入れた籠は賊の手にかかって破れており、ハンナたちは顔を曇らせていた。