わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
「メリー、私たちが泣いていては駄目ですわ」
怒りがしゅんと萎み、つられて一緒に泣きそうになるハンナだけれど、そういえば!とピンと思い出して自分の荷物が入っている籠をガサゴソと探った。
「メリー、これを見て」
ハンナが取り出したものを見たメリーの涙がぴたりと止まった。
「ハンナ、これは・・・」
「私、リリさまにお元気になっていただくためには、綺麗なドレスを新調するのが一番だと思いますの!」
ハンナが持っているのは、宿場街の朝市で購入した綺麗な色の反物。
これを一日で仕立てられれば、滞在中のドレスにできる。
「赤色ドレスを見本にして早仕立てを頼めば間に合うかもしれないわ」
「そうですわね!一国の王女が破れを繕ったものや賊が足蹴にしたものをお召しになるなど、言語道断ですもの!それにリオンには素敵なドレスがたくさん売られているはずです!」
王都に着いたら早速手配しましょう!と手を取り合うメイドたちだが、その喜ぶ顔がぱたりと止まった。
一番大事なことを思い出したのだ。
今は旅路の真っ最中で、唯一泊まったのはとっても安そうなお宿。
「ハンナ、どうなんでしょうか・・・?」
「資金、ですわね・・・聞かないと・・・」
二人は、隊長であり金庫番でもあるマックの厳つい顔を思い浮かべた。