わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!


「でもでも、マックさま。反物が一つありますから、一着はお安く済みますわ!」

「私、持参したお小遣いを全部出しますから使ってください!」


メリーがそう言って懐から巾着を出すと、静観していた騎士たちも「俺も出します!」と言い始め、マックの手に紙幣がどんどん積まれた。

その様子を見ていたリリアンヌはあることを思い出していた。

レイと行った遊技場。賞金を受け取ったあのとき、今のマックのような状態だったと。

今までお値段なんて考えたこともないけれど、どうやらドレスを用意するにはたくさんの紙幣がいるようだと分かった。

あのときは『いいものを見た』と言って紙幣を多くくれた人もいたし、賞金を全部出せば足りるのかしら?と思う。

が、もしもこの紙幣はどうした?と訊かれたらどう答えたものか悩んでしまう。

けれどもマックたちはとても困っていて、しかも自分のドレスのことだ。紙幣があるのに無視するわけにはいかず、リリアンヌは声を上げた。


「資金は、あります。だから皆のお小遣いは仕舞っていいわ。わたくしのためにありがとう」


どこに?と怪訝そうな表情をする皆の前で、リリアンヌは籠の中の二重底を開けて見せた。

大量の紙幣がもっさりと顔を出し、おおお~と感嘆のどよめきが起こる。


「これだけあれば、足りるかしら?」


戸惑い驚いた表情をしていたマックだが、ゴホンと咳ばらいを一つして居住まいをただした。


< 82 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop