わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
それをお手本にしてリリアンヌも実をかじる。
「美味しい」
「それはよかった。私はここのコックなんですよ。夕食のデザートにはこれを使ったケーキを出しますから、楽しみにしててください」
「本当ですか!?リリさま、良かったですね!」
ハンナが心底嬉しそうに声を上げるから、リリアンヌはクスクスと笑いをもらした。
ハンナは、食後のデザートが出る宿はここが初めて!しかもケーキだとは楽しみ過ぎる!とますます喜んでみせる。
リリアンヌが少しでも元気になったのがすごく嬉しいのだ。
そんな様子が余程可笑しいのか、コックは声を立てて笑った。
「今の時期にリオンに来られたということは、お嬢さんたちも王太子さまの誕生祝いに来たのですか?」
「はい、あの“私たちも”ということは、他にもたくさん来られているんですか?」
ハンナが尋ねると、コックは大きくうなずいた。
「そりゃあ、もう。国内はもちろん近隣国からも、高貴なお方が来られていますよ。王太子さまは、大変人気がございますから。そろそろお年頃ですし、みなさんお妃の座を狙っておられるようです」
「えええ!?お妃さまの座を、ですか!?でも王太子さまにはお相手がいらっしゃいますよ!?」
ハンナが驚きの声を上げると、コックは少し苦笑いをした。