わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
そんな風でアベルに嫌われて破談にしてしまうと、国交的にも大変なことになる。
ハンナはリリアンヌよりも一つ年上で、しっかり者だと城内でも評判のメイドだ。
嫁入りのお付にも選ばれていて、『きっちり育てます!』とカレンに教育されており、そのせいかだんだん彼女に似てきた。
そんなハンナをリリアンヌは信頼しているし、はっきりものを言ってくれるのは好きだと思っている。
今回のリオンへの旅にも同行するのだろう。
というよりも、彼女がいないとリリアンヌは不安なのだ。
「アベルさまは、私のことを気に入ってくれるかしら?」
「大丈夫です。リリさまは、夕日の光を集めたように輝く茜色の髪を持ち、肌は透けるように白く、ばら色の頬は愛らしく、桃色の唇はぷっくり、瞳はきらきらと輝いて、容姿は近隣の国でも一番と評判ですもの。静かにしていれば大層美しいのですから、にっこり微笑んで見つめてしまえば、アベルさまもイチコロですわ!」
もっと自信をお持ちになってください!と、ハンナはにっこり笑う。
「リリさまは、もっとご自分の美しさを自覚なさった方がよろしいですわ」
「そう?ありがとう、ハンナ」
「それには魅力を最大限に引き出せるドレスを整えるべきです!」
今から選んでみましょうと、それから夜までの間二人は部屋直結の衣装部屋に入り浸り、ドレス選びに時間を費やした。