わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
「はい。腕によりをかけて、美しく仕上げます!あのコックの顎を外して、簡単には戻らないようにしてやりますよ!!」
明日の朝が楽しみです!とハンナの瞳が強く輝き、まるでメラメラと燃えさかる闘志の炎が見えるよう。
「頼りにしてるわ」
「はい!お任せください!でもそれには、まずドレスですわ!」
二人が首を長くして待っていたドレスは、疲弊顔のメリーと一緒に夜更けに到着した。
リリアンヌの部屋で「遅くなりました」と言って包みから出されたドレスは、早仕立てとは思えないほどの素晴らしい出来栄えでハンナは感嘆の声を上げた。
「メリー、ごくろうさま」
「はい。精一杯頑張りました」
仕立て屋探しにはトーマスが大活躍したそうで、彼がニコッと笑って女性に尋ねるだけで有益な情報が多く得られたという。
女性の方から寄って来て情報をくれたこともあったと。
さすが、騎士一番の伊達男である。
だがその伊達男ぶりは仕立て屋では活躍せず、何件も無理だと断られ、最後に行った小さな仕立て屋でやっと引き受けてもらえたという。
本来なら間に合わない無理な注文だったのに、事情を聞いて同情してくれたお店の人が夜を徹して頑張ってくれたと語る。
「年配のお方で、それはそれは小さくて古いお店構えだったんですけど、とても親切にしてくださいました」
だからメリーはお店の掃除や洗濯、トーマスは壊れた場所の修復などをして、精一杯の奉仕をしたという。
リリアンヌは心から感謝し、お礼と労いの言葉をかけたのだった。