わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
リオンの花嫁
到着後すぐに城の謁見室で国王に挨拶を済ませたリリアンヌは、案内された客室の中でふぅっと息を吐いた。
緊張から解放されたのもあるが、ちょっぴり拍子抜けもしていた。
謁見室でアベルに会えるとばかり思っていたのに、今は視察に出かけており留守だと言われたのだ。
誕生パーティまでには戻るとのことで、対面するのはそれまでお預けとなる。
ホッとしたような残念なような複雑な気持ちに襲われ、リリアンヌは気分転換に庭に出ようと思い立った。
リオン城の自慢の一つに庭の美しさがあり、自由に散策してほしいと国王に勧められている。
メイドたちに声をかけようとするけれど、ハンナがひとりで部屋を整えていることに気がついた。
「ハンナ。メリーはどうしたの?」
「すみません。メリーは具合が悪くなりまして、お部屋で休んでいますわ」
それは大変!と、リリアンヌはすぐさま見舞いに向かう。
メイドの部屋でベッドに横たわっていたメリーは、リリアンヌの姿を見て起き上がろうとする。
その顔は赤くとても辛そうで、一目で熱があるのだろうと分かり、急いで制した。
「メリー、そのまま横になっていて構わないわ」
「リリさま・・・すみません」
「メリーは少し熱が出まして、医者によりますと旅の疲れが出たのだろうということでした。すぐに治りますから心配しないでください」