平成名奇譚
第一幕
2016年4月 名前統制局
出勤時刻の8時を少し過ぎた統制局内にはまだまだ人が少ない。
国営の機関なのにこれで大丈夫か?
ま、良いか。
オフィスに顔を出す前にガラスで格好の確認。
ベリーショートの茶髪、統制局の管理する学園指定の制服、まだ履き慣れないローファー。
うん、不備はなし。
「もしかして水束さんっすか?」
オフィスの扉に手を掛けると声をかけられる。
(おしゃべり佐々木か....)
おしゃべり佐々木こと佐々木照〈ササキテル〉は局内でも有名な『一言多い馬鹿』だ。
「おはよう、佐々木」
「うわぁっ....水束さんがスカート履いてる....」
条件反射で鳩尾に一発叩き込んでやった。
確かに私はかなりボーイッシュな見た目をしてるし、いつもは機動性重視でパンツスタイルだけども。
うわぁって失礼だろ、仮にも私は女だぞ。
さっきの一撃で伸びている佐々木は廊下の隅に捨て、気を取り直してオフィスに入る。