平成名奇譚
出勤早々の悲劇
「はよーございます」
「やっと出勤かぁ?13分47秒の遅刻だぞ」
奥のデスクからやる気のない男の声で細かい指摘が飛んでくる。
この『名前統制局』のトップである局長なのだが、名前は局内の誰も知らない。
「遅刻の理由は佐々木にでも聞いてよー、局長」
よし、さっきの腹いせに佐々木に遅刻の処分を全部押し付けてやろう。
それにしても、私のデスクに山積みになった書類は何故なのだろう....。
確かに昨日で3日分の仕事を前倒しで終わらせたはずなんだけど。
「お、気付いたか」
「どういう事ですか?前倒しで仕事終わらせたはずなんですけど」
返事は無い。
どうやら、局長は寝たフリで私の追求を強制キャンセルしたようだ。
このおっさんめ....、私が活字読むの苦手って事知ってんだろーが!
昨日の書類処理も死に物狂いでやったってのに。
あまりの鬼畜の所業に思わず顔が引きつってしまう。
「すみません古賀さん、こちらで事情を説明します」
副局長の詩月さんが苦笑しながら説明役を買って出てくれた。
流石統制局の女神!
もう一度活字地獄に嵌るのだけは願い下げだ。
ありがたく拝聴させて頂きます。