距離

2節

隼人くんとゆっくり話しながら廊下を歩く。
対戦前に佐那ちゃんが来て、愛しの隼人くんはどこへ行ったのか聞かれた。自分の試合が終わったらすぐ来ると伝えると「じゃああんたが試合出てるところ見れないね。」と言われた。
私をすぐに潰すと宣言され、私自身もカッとなり受けて立ってしまった。
自分でも途中から頭を狙われてることはわかった。頑張ってはいたが、運動音痴の帰宅部VS現役ハンドボール部。勝てるはずがなかった。
倒れても隼人くんがいる。そう思い半分諦めてしまった。
「もし俺いなかったらどうするんだよ!」
「だって来た瞬間わかったし。」
「藍海、緊張しいだから隠れてたんだけど。」
呆れ顔で言う隼人くん。
「私の隼人くんレーダーなめないでよ。」

でも正直、怪我までさせられそうになるなんて思っていなかった。
元彼をとられた恨みでここまでするなんて。
ふたりはよりを戻しそうだった。ということはまだ佐那ちゃんに、隼人くんへの気持ちがあったということになる。
自分が実は悪者だったことに気づく。勝手に横入りしたのは私だ。
本当は佐那ちゃんと隼人くんが結ばれるはずだったのかもしれない。
そう思うと、今こうやって隼人くんの隣にいることが申し訳なくなった。
「あっ。佐那ちゃん。」
声をかけると佐那ちゃんがこちらを振り返った。
「あれ!生きてたの?」
嫌味を言われるのも、当然な気がしてきて逃げたくなった。
「ごめん隼人くん、保健室に忘れ物してきた。先帰ってて。」
「待って俺も行く」
「ついてこないで!」
隼人くんの手を振りほどき保健室まで走っていく。
いつも私は隼人くんに悲しそうな顔をさせてしまう。でももしかしたら、これが最後かもしれない。
私なんかより佐那ちゃんの方がお似合いだよ。
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