距離
「ウケる。振られてやんの。」
藍海はこいつの顔を見るなり逃げようとした。こいつのことが怖いんだと思った。でもついてこないでなんて言われたら。
俺はまた藍海に嫌われるようなことをしたかもしれない。どこまで藍海を傷つければいいんだろう。藍海を守るために付き合ったのに、傷つけてるのは俺だった。
「振られても、連れ戻しに行くから。」
思っていることと反対のことが口から出る。たぶん俺なりの強がりだった。
「うちらより戻せそうだったじゃん。心変わり早すぎて、まじ笑ったんだけど…。」
付き合ってる頃にも見たことがなかった佐那の悲しそうな顔。
でも俺にだって言い分はある。そもそも態度がそっけなくなったのは向こうからだった。
「なんでいきなりそっけなくなったんだよ。」
俺がずっと聞きたかったこと。
「直接会って話したかった。でもLINEで話してたら話題なくなっちゃうから、あんまり話さないようにして、会って、ちゃんと話そうと思ってた。」
震える声で佐那が続ける。
「でも無理だった。顔合わせると話せなくて、どっちもそっけなくなっちゃって。そしたらいつの間にか隼人は仲の良い女の子がいた。」
ここで初めて佐那の思いを知った。
「ごめん。そんな風に思ってたなんて知らなかった。本当にごめんな。」
俺もちゃんと伝えよう。
「俺、藍海のこと本気で好きになった。その時にちゃんと佐那に伝えるべきだった。本当にごめん。色んな事で傷付いてきた藍海を守りたいんだよ。傷付けるなら俺にして。もう藍海には何もしないでほしい。頼む。」
自分なりに深く頭を下げた。
「わかったよ。もうやめる。早く大切な彼女さんのところにでもいっておいで。じゃ。」
後ろを振り返る佐那。顔が見えなかったが、俺には水滴がいくつか飛んだのが見えた気がした。
「佐那のこと守ってやれなくてごめんな!」
背中に向かって叫んだあと、保健室へと向かった。
< 17 / 17 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

大好きな人へ

総文字数/0

ノンフィクション・実話0ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop