距離
1歩目

1節

好きな人がいない。
小学生の頃は常に好きな人がいた。所詮小学生の恋だから、それが本物の好きなのかはわからなかった。
中学生の頃も同じだった。男子にキャーキャー言うのが楽しくて仕方がなかった。彼氏もいた。好きが本物かどうかなんていい。楽しければよかった。
高校に入学してから自分の中に変化が現れた。男子にときめかなくなった。好きが何かを考えるようになったからかもしれない。それでも寂しかったから告白された人と適当に付き合って適当に別れてを繰り返していた。
高2の夏、あるチャットサイトにハマッた。知らない人と1対1で話せるサイト。ヤリ目もかなりいたけど、進路の相談に乗ってくれる人もいてそれなりに役に立っていた。部活も辞めてすることがなかった私には丁度よかった。友だちなんていなかった。

高2になって、いい感じの人ができた。同じクラスの翔太。色白で背は高めでスラッとして少し控え目。体育祭をきっかけに仲良くなってから、休み時間も一緒になって話していた。
いつも一緒にいた真奈美がそれをよく思わなかった。二人で話していると割り込んでくることが多くなった。他の子だったらよかったかもしれない。真奈美の行動には悪意があって不愉快だった。その時からだんだん真奈美と仲が悪くなっていった。
もう一人、仲が良かった紗耶香が一緒に3人でお祭りに行こうと誘ってきた。3人で計画を立てていると紗耶香が「男子も連れて行ったら楽しいよ!」と言い出した。私は翔太と行きたかったから、ノリノリで了承した。
ただ、真奈美がいいと言わなかった。「私男子無理だから。」と言った。正直、私以上に男子と話していることが多かった真奈美がそんなこと言うなんて思ってなかった。そのうち「お祭までの行き方がわからない」とか、「交通手段ない」とか言い、揉め始めた。
翔太が「俺が迎えに行く。」なんて言い出した。そんなの許せるわけがない。自分の性格の悪さにため息をつきながらも、「交通手段くらい自分で調べろよ。」とひとこと言い放った。
次の日学校に行くと、女子の全員が私と口を聞いてくれなくなった。翔太とも気まずくて話せなくなった。やっちゃった。2年間変わらないクラスで、早くも浮いた。浮かないように、必死にみんなに合わせて頑張っていたのに。
もう仕方がない。
でも、過ごしてくうちに一人の生活も慣れた。むしろみんなに合わせなくていい、ひとりでいられる生活が楽だった。
友達がいても疲れるだけだし、好きな人いたって、彼氏いたって面倒なだけ。
人と深く関わらないのが1番うまく生きる方法なのかもしれない。
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