大人のような子供の二人
「…………」

 目の前はこのビルの入口。

 背後には人の気配。

 しかも、それは聞き覚えのある、とても聞き覚えのある声。

「加納さん?」

 と、覗き込まれて、瞬きした。

 ……声はともかく、何だかとっても不機嫌そうな今野くんの顔。

 やっぱり来ちゃいけなかったかも知れない。

 だいたい、あんな事を言っちゃったのは私の方なんだし、それを今更何しに来たって感じなのかも知れない。

 何でこんなとこに来てるんだよ、とか、邪魔で入れない、とか、思われているかも知れない。

 ホントのホントに、何しに来てるんだろう……

 何だかいたたまれなくなった。

「何でもないの。たまたま近くを通り掛かったから」

 そう言って、振り返る。

「こんな夜中に? しかも駅は遠いし、加納さんのウチはここと逆方向でしょう」

「う、宇津木君達と飲んでいたから」

「ふぅん?」

 今野くんはそう言って、胸ポケットからサングラスを取り出してかける。

「お茶でも飲んで行きませんか? 僕も少し休みたいですから」

 え。

 手元を見ると、その手には大きなバックを抱えていて。

 ……仕事してたのか……。
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