大人のような子供の二人
「ううん。ごめんなさい、疲れてる所に……じゃ」

 手を上げると、首を振られる。

「こんな夜中だとバスありませんから。駅まで送りますよ」

「いいよ。ちょっと歩けば大きな通りに出られるし」

「その前に大きな公園がありますから。女性の一人歩きはやめてください」

 そう言えば、ここに来る途中に木がたくさん見えたかも。

「大丈夫よ」

「加納さんが大丈夫でも、僕が大丈夫じゃないんです」

「子供じゃないんだから」

「そんな事は解ってますよ。だからです」

 だから?

「一人で何でも出来る大人なのは知ってます。だけど僕も一人の男ですから」

 声音にもイラつきが聞こえる。

「わ、私、今野くんに送ってもらうつもりで来た訳じゃ……」

 鍵を開けながら、今野くんは私を見下ろし──……

「それも解ってます。いい加減、大人しくしてください」

「……なっ!」

 言い返そうとした瞬間、有無を言わさずにビルに押し込まれた。
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