大人のような子供の二人

 ……と言うか、何を話せばいいの。

 まだ考えなんか浮かんでないよ。

 浮かんでないから、ビルの前に立っていたんだしね!

 だいたい宇津木君があんな事を言うから来たのであって、考えてはいても何も考えていなかったのよ。

 何を……って、何を考えていたんだろうな。

 謝らせてやりに、なんて思っていた訳じゃないの。

 私だってそこまで人間としてなってない訳なんだし、そんな事を言ったら、それこそ何様って感じだよね。

 私こそ何様って感じよね?

 だから言っちゃいけない、いけないわけで……。

「あ……」

「あ?」

「ぁあ謝ってもいいからね!」

「…………」

 1番言わなくていいことを言った。

 ポカンとする今野くん。

 うん。間違いなくビックリするよね。

 私だってここまで上から目線で言うつもりはなくて──……。

 だいたい、謝って欲しいって気もしないし。

 だって、良くも悪くも今野くんは嘘は言わない。

 お世辞も上手くないし、実に丁寧な厭味を言うのはぴか一で。

 それはちゃんと知ってる。

 だから、アレが本心なんでしょう?

 本心だって知ってる。

 知ってるから、そんな事を謝らせるつもりはないし……

「加納さん」

「何っ!」

「物凄い顔」

 ……とても爆笑された。

 それはそれでムカつくと言うか……。

「どんな顔よ」

「いや。まぁ……むっとしてますね」

 笑いを納めながら今野くんは咳払いをして、ポンポンと頭を叩いてくる。

「でも、この間は確かに言い過ぎました。すみません」

「…………」

「まだご機嫌斜めですか?」

「…………」

 まだ……と言うよりも、今、ご機嫌斜めになったよ。

「そういう所、嫌いじゃないですけど大変なんですよね、俺」

「何がよ」

「加納さんて、一人でなんでもやろうとするから」

「…………」

「あの宇津木さんだって、俺に出来るとこは任せてくれましたけど」

「……知らない」

「そりゃ言う必要もないですから」

 ビールを飲み飲み今野くんはクスクス笑って、ふっと顔を近づけてくる。

「そんなとこが可愛いですし、可愛くないんです」

 何が言いたいのよ。
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