大人のような子供の二人
「何を色ボケたこと言っているんですか。欲求不満を言ってないで、仕事しましょうか」

 え。いきなり何を言い出すの?

 思わず今野くんをキッと睨んで、椅子をくるっと廻して向き直った。

「それって──……」

 どういう意味よ? 聞こうと思ったけれど遮られた。

「だいたい貴女みたいなムチャな女、相手の男が可哀相ですよ」

 ちょっと、別に男が欲しいとか、そういう意味の〝いいね、男って〟って意味じゃないんだけど。〝能天気でいいね、あんたって〟って意味ではあるけど!

 でも、これって暴言じゃない? こ、この男は……っ!!

「加納先輩はいつも納期が間近、飛び込みの仕事も多い癖に要領も悪いし」

「それは……」

 反論できないけど。

「人をすぐ殴るし、細かいとこうるさくて小姑丸出しだし、裏表激しいし、可愛くない……」

 確かにちょっと手が早いのは確かだけど、仕事の事だけならともかく、人の性格の事まで言う!?

 酷くない? 酷いよね……?

「解った」

 低く呟いたら、今野くんは小さく退いた。

「わかっ……た?」

「書類、返して頂戴」

 手を差し出すと、書類と私を交互に見ていた視線が下を向く。

「早くしてくれない? 私は暇じゃないの」

「あの……」

 言い淀む彼を、椅子に座ったまま冷たい視線で見上げる。

「貴方の写真なんていらないから……早く返して、それから消えてくれない?」

 そう言った時、やっと書類を手に乗せられた。
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