大人のような子供の二人
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「それでか」

 クレイジーフルーツと言う名前のバー。まだお客様も少ない時間帯。

 ラテン系の音楽に、薄暗い店内の渋い色合いのスツールに浅く腰をかけながら、低く呟いた宇津木君。

 何気なく格好悪いのは……彼が飲んでいるのが、トロピカルフルーツ盛りだくさんのオレンジジュースだからかも知れない。

「それでか……で、済ませないでよ」

 ぶつぶつ言った私の背後で、楽しそうにフラッシュを瞬かせる神崎ちゃん。

 今日は雑誌掲載の写真撮りらしい。

 ついでみたいに呼び出され、ノコノコ来たのはいいけれど……。

 急に『今野の奴は元気か?』と、聞かれて無視を決め込んだら、今度は『どうした』と、聞かれて一週間前の出来事を暴露。

 その一言で終わらされた。

「女って、男心が解らない生き物だな」

 それはそれは、深い溜め息もついてきたけど。

 貴方の彼女が特殊なんじゃないかな……とは言わないでおいた。

 それにしても、お酒も飲めない宇津木君が神崎ちゃんの仕事場にでしゃばる辺り、相当な心配性ぶりだよね。

 ……とも、言わないでおいた。
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