僕らの時間

「陽菜ちゃん…」

「南先輩、1つでも食べてから文句を言ったらどうですか?」



教科書を抱え、僕を睨みつけるように見上げる背を低い女の子。


ハルナ…?



「……聞いてます?」



聞いたことのない名前だな。



1年生か?



「僕は後輩からチョコは貰わない主義なんで」




何で僕がこんな嘘をつかなきゃいけないんだ。



「…カッコつけちゃってバカみたい」


「は?」



今なんて言った?


バカみたい?


ふざけるな。僕ごときでキャーキャー騒ぐ君たち女子の方がバカらしい。



………騒いでないな、この子。



「カッコつけてないしバカで結構」

「バカ中のバカよ。女心わかってない」

「そんなに僕を嫌うなら話しかけてこなきゃいいのに」

「は?私はただ親友のために言ってるんですけど。別にあんたが嫌いとかどーとかいう話じゃないし」



本当にめんどくさ…………くはないか。



この子の言ってることは正論だ。



「…君、名前は?」

「あんたなんかに言うかバカ」

「ふはっ、面白いね」

「ふんっ」

「山田 陽菜《やまだ はるな》ちゃん…か」

「は?!なんでわかんの!?」

「名札」

「…っ…///」



この子天然なのか…?



「僕は南 朔弥…って知ってるか(笑)」

「名前なんて聞いたところでですけどね」

「どうして?」

「もう会うことはないから」

「それはわかんないよ?同じ学校にいるから」



なにを言ってるんだ僕は。



「ナンパしないでください」

「ナンパなんてそんな真似しないよ」



あぁ、なんかもうおかしくなってる。

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