あの頃ラッキーストライクと彼

頭の良い川野だから疑いが有りつつも明るい未来を信じるしかなかったのだろうと思う。


俺にしてもそうだったと思う。


時代は八十年代で日本中が浮かれていたから騙されたふりをするしかなかっただと思う。


学歴のないそして田舎の俺達にそんなに明るい未来等は滅多な事では待っていなかったのだ。


「尚樹、結婚式には俺は呼べないだろうけど、そっと見せてくれよな。」


川野が懐中電灯を吊るしただけの薄暗いテントで真面目に言った為に俺は笑いそうになり顔を見た。


薄暗い中でその顔は真剣だったので俺は笑うのをやめた。


「結婚できるのかな?結婚して子供が出来てダサイ格好してファミリカーに乗るのか?

それならその辺の軽トラに乗って農業か何かをしてる方が想像出来るけどな。」

俺はそういうと軽く笑った。


当時の本音だったと今でも思う。

俺達はその後も色々テントの中で話した。


話した内容は覚えてないが、薄暗いが二人だけの空間が心地良かった事と波の音は今でも思い出す。



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