あの頃ラッキーストライクと彼
ラッキーストライク

川野が自殺したのを知ったのはほんの数年前だった。


その前に会っていた為にショックだったがある程度予測はついていた。

組内部でのゴタゴタは何となく耳に入っていたからだ。

三十代で三度ほど会ったが一時期全く連絡が取れなくなり服役してる事を知ったが俺も自分自身の事が大変で何もしてやれなかった。


服役後に四十代半ばで二人で飲んだ。


短い時間だったが、俺達は特に何も多くを語らなくても良かった。


川野の姿を見られたらそれで良かったのだ。


俺のジーンズに革ジャンを見て相変わらずで羨ましいよと笑った。


「尚樹ところでお互いに結婚はしなかったなあ。今後予定があるならその女の子を会わせろよな。」



と笑いながら言ったので俺は言い返した。


「タケちゃん、なんで女の子なんだよ。若い女の子が四十代半ばを相手にするかよ。」



そういうと川野も笑った。


そしてお互いにラッキーストライクを出して吸った。


「当たり前にラッキーストライクが吸える時代になるとはね。」


川野はそう言って深く煙を吸い込んだ。



それが最後になった。



川野も俺も十七才の頃に果たして自分自身の運命がこうも激しい物になると思っていただろうか?


思っていなくて明るい未来があるように勘違いしてたのだろうか?


川野は死んで俺は生きてる。


だが、大きな違いは何なのか分からない。


まだ若い川野のテントの中での表情が時に思い出せる。


ラッキーストライクは特別な物では無くなったが俺はそれを吸いながら時折川野を思い出す。


ラッキーストライクを吸うと時々周りの風景が歪んでしまうのは仕方ない事だろう?
















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