夫の教えるA~Z
「……何処に連れていってくれる予定だったんですか?」

 肩にかかった手を取って、自分の首もとに持ってきた。
 すると彼は、もう片方の手も同じように重ねた。

「ああ」 
 “ガキっぽい君ならゼッタイこれだと思ってたんだ”、とひどく自信ありげに語ってくれた。
 シツレイな。

「愛車(GTR)で近所の遊園地へいき、絶叫系を全て制覇した後に軽く夕食だろ?
 海沿いの展望台まで飛ばす。車内で夜景を見ながらイイ雰囲気になってきたトコロでキス。
 トーコがメロメロのウルウルになった時点でバックシートに押し倒して……
…という、3年間温めていた完璧プランだったんだが……」

 彼は何を3年間も温めてたんだろう……

「最後の方、余計なオプションつきなのが気になりますけど……ま、今度の楽しみにとっときますね」

 顔を上げ、目を見合わせて微笑み合った。見下ろす彼につい魅せられる。

 そうだ。

 もう、許してあげよう。
 お外で戦う彼を、トーコはちゃんとヒーリングしないとね。
 それに、恥ずかしながら……ソロソロ私も限界だしね。

 勇気を出して、小さく言った。

「あの……何なら後で……オプションのトコだけ……してもいい……かな?」
「え?」
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