夫の教えるA~Z
一瞬呆然として、覗き込んだ彼の視線に、私は顔をサッと叛けた。  

「…いいの?」
「エ?」

キラーーン。

瞳に不穏な光が宿る。

まずかった……思った時は遅かった。

彼は間髪を入れず、私の向きをクルリと変えさせ、腕(かいな)にすっぽり収めてしまった。
と思ったらすぐに身体を離し、熱っぽく囁く。

「これからはもう……ずっと優しくするから、な?」

切なげな瞳で迫るかつての上司。

「アキトさ……せめて夕食を……ん…」

脳幹に直接訴えかける完璧なキスで、私はしごくあっさりと骨抜きにされてしまう。

もう一度、唇をゆっくりと重ねながら私を縱抱きに持ち上げる。
抵抗力を削がれた私は、彼の首に両腕を回さざるをえない。

 
そのままベッドルームに直行した彼は、『こないだのお詫び』とのたまって、かつてないほど入念に私めを、ヘトヘトになるまでお可愛がり下さった。


……どうやら私は、またしても彼のペースに乗せられたみたいだ。


ってなわけで。

私のカカア天下は

たったの1週間でオワってしまったようです。



(K おわり)
 
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