夫の教えるA~Z
「じゃ、またね。トーコちゃん。片付けさせてゴメンね~……さっさと来い!」
「ひっ」

 夏子お姉さんは、にこやかに私に微笑むと、残っていた皆も叩き起こし、引き連れて帰って行った。

……う~~ん。
 こうしてみると、実に姉弟ソックリだ。



 

その夜ーー。

 疲れてそのままの姿で横になってしまった私は、ポップでシュールな夢を見た。

『ご主人様、まだかなあ。もう夜が明けちゃうよぉ…』

 西洋の不気味な城の中、コウモリになった私はご主人様、吸血伯爵(アキトさん)の帰りを待っている。

 するとそこに、ファサリとマントを翻し、ご主人様が帰城する。

『只今、トーコ』
『あ、ご主人様……』

 嬉しくって私が飛び寄ると、彼のマントの懷から、獲物の美少女がヒョッコリ顔を出す。

『あ……』

 シオシオと床に落下したコウモリ(私)に、機嫌良く彼は命令した。

『食事の支度を。今夜のメインディッシュは飛びきり美しい…』
『伯爵様……』

 うっとりと見つめ合う二人。

 そ、そんなぁ~~……

 それを尻目に私は寝室の準備を始める。
(オイッ!)
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