夫の教えるA~Z
『命令だ。オマエはここで見ておきなさい』
(オイオイ…)
 
 薄いレースの帳の中に、美少女がそっと横たえられた。
 うっとりと彼を見上げる恍惚とした彼女に、彼が優しいキスを落とす。

 やがて白い首筋に彼が歯牙を掛けてゆく。
 プツリと音がして紅い雫が溢れると、彼女が嬉しげに身悶えを始めた。
 
『伯爵様…あっ…』
『君はなんて美しい……』


うう~~~~。
 魔力で縛られた私は、逃げようにもその場を動けない。
 ハンカチを噛み、ただただ涙に暮れている。


 ご主人様ぁ~。この私を目の前にして、他の女にそんなコト…

 お願いです。何でもやります。トーコは貴方に尽くします。

 だからこんな仕打ちはもう……ヤメテ‼

『嫌ぁアアアアアアアア……』 




 


 
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