夫の教えるA~Z
「失せろジジイ、職務を果たせ」

 ブルブルと震えたまま立ち尽くすヤツに、俺は最後の台詞を吐くと、

 フハハハハ…

 ヤツに思いっきり高笑いを浴びせた。
 
「ア、アアアキトさん、それじゃあまるっきり悪役(ヒール)ですよ……」


 と、項垂れていた石田部長が突如顔をあげ、濁った赤い眼で俺を睨んだ。

 そしてーー

 いけね、やり過ぎたか、思ったのも束の間。

「う、う、アアアア」

 集まってきた人だかりをものともせず、奇声を発しながら、ガムシャラにナイフを振り回して突進してきたじゃあないか。

 お~~‼ヤレヤレー
 キャー‼
 半分芝居だと思っているギャラリーから矯声が上がる。


 
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