夫の教えるA~Z
「あ、アキト……さん?」
「トー……コ?怪我はない……」

 彼女の無事を確かめようとした俺は、急に立つ力を失って、膝から崩れ落ちていった。
 
 ギャラリーが、放心状態のトーコと石田部長が俺の腹のあたりを見ている。

 俺は2人の視線に合わせて下を見た。
 白はずのシャツに、妙な赤い模様が拡がっていく。
 不思議に思ってそこに触ると、何の汚れか、ベタベタする。


 手が……ヌルッと赤い。


「あ、アア、アキトさぁん‼」

 トーコの声が遠くに聞こえる……
 


 な、な、な……ナンじゃこりゃあぁぁ‼‼

 

 (l に続く)
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