夫の教えるA~Z
私はクルリとベッドに向き直り、横たわるヨミがえりの顔をマジマジと見た。


「はぁぁ~……若い娘は、エエのう♥」

シワシワのお爺ちゃんが、顔を少し赤らめて、歯のない口でニタリと笑っている。

う…うげっ‼

慌ててその手を振り払い、
ベッド脇から離れると、
重苦しい雰囲気で後ろに控えた数人が、ボーゼンとこちらを見ている。

「お爺ちゃんが……」
「親父が…」
 
「「生きてる…」」

家族と思われる彼らは顔色を失っている。
それらを押し退け、老婆が杖を振り回しながら飛び出してきた。

「ア、アアアンタ、うちのジイサンの
何なんだい⁉」

「うぇ⁉いやその、
私はただの通りすがり……イタタっ、イタいっておバーチャん、ヤメテ…」
 
慌てて首を振りながら杖の乱打を避ける私。

挙げ句、

「せ、先生、ミヤウチサンが‼」
ようやく我に返った看護師さんは、叫びながら走り出す。

ウワアアアアア……

収拾がつかない。 


混沌(カオス)だ。
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