夫の教えるA~Z
「じゃあハイ、乗って」
「な、なんで?」

「逃げないように」
「ちょっ…ヤダ」
彼は、ヨイショと腰を持ち、私を彼の上に“お膝抱っこ状態”に座らせた。
 
「ヤダ、コワイよ~~っ‼」

自由を奪われ、拘束された恐怖でジタバタと暴れる私を、彼は強い力で抱き止める。

しかし、いつまでたっても行為に及ぼうとせず、後ろから私をギュウッと抱きすくめたままでいる。

「……想像してた通りだ」
「え、何が?」
「抱き心地……いや、何でもない」


不審に感じた私は、つい尋ねてしまった。

「……やんないんですか?」
「え、何を」
「だから“コチョコチョ”を」

「あ、ああそうか、そうだった。
やるよ、やるともさ」

……墓穴を掘った。

彼は、ソロリと胸の前で両腕をクロスさせ、腋下にピタリと手を当てた。

ザワッと背筋が寒くなり、下腹がキュッと縮まった。

「うっ…」

しかも運悪く、今日の私はノースリーブだ。

「…じゃあいい?やるよ」
「は、早く…して」

やるなら、やっちゃって~‼

「ふっふっふ……」

知ってか知らずか、彼は焦らすように、たっぷりと間をとった。
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