夫の教えるA~Z
だが……

「ここ、来たことあります。4年前、学生の時。
イブの夜に

前のカレと!」

私のトゲはまだ抜けない。 
沈黙の末、私は彼に意地悪を言った。

(最近気付いたんだが、彼はかなりシット深いのだ)

固い声で言い放ち、私の肩にそっと乗せようとした彼の手をパシンと祓う。

「…そう」
祓われた右手を寂しげに撫でている彼に、私は少しだけ満足した。

フンだ。
貴方がどこでナニをしてるか知らないけど、
私にだって貴方の知らない思い出くらい、いっぱいあるんだから!

悪感情が、私の心を支配していた。

しかし、思惑に反して彼が動揺することはなかった。

「そういえば俺も来たことあるよ。帰省した時に友人とだけど。
もしかしたら、その時の君とどこかで擦れ違ったのかもしれないな」

な、何よっ!

涼しい顔でサラリと会話を流した彼に、私の対抗意識はさらにエスカレートした。


「……チューだって
したんだから…」

別にこれもウソじゃない。
カレと私は、ちょうど今見えてる木陰の辺りで、皆に隠れてキスをしたんだ。

軽くだけどね…

と、彼がピクッと眉をしかめた。
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