夫の教えるA~Z
家まで10分足らずという時点で、私はついに我慢ができなくなった。

「あ、あのっ!」

ん?
彼がチラリとこちらを向く。

「プ、プレゼントが…その私なんかで良かったら…
あ、アナタがイヤじゃなかったらだけど…」

そんな大層なものでもないんデスが…

真っ赤な顔を隠すように俯きながら消え入るような声で言うと、彼は慌てて目を逸らした。

「そ、そっか。
じゃ、実家ってのもあれだから……
場所かえようか」

「…うん…」

ちょっと恥ずかしかったけど、
私はホッとした。

やっぱり彼、ガマンしていただけだったんだ。
にしてもこの人。
さっきのキスといい、こんなピュアな顔するんだな。

今日はやっぱり特別な夜なのかもしれない。

照れくさそうな彼の横顔を見つめ、クスリと笑んだ私は___


まだまだ甘かった。

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