夫の教えるA~Z
 だから3ヶ日が終わり、彼が初仕事に向かう前夜には、解放の歓びに浸るあまりついつい万歳三唱してしまった。

「キャッハー、万歳(マンセー)!」

無論、その姿を見つけた彼が激怒したのは言うまでもない。


「おい、ちょっと待て。それは一体どういうことだ」
「はっ!」

 ベッドの上で両手を上げたまま硬直した私に、彼はツカツカと歩み寄った。

「あの時は
『何処にも行かないで、トーコだけを見つめてて』
なんてヌレヌレの熱々で言ってた癖に」

「い、言ってない…」
 
 ブルブルとホッぺが震えるほどに首を振るも、彼は全く意に介さない。

「俺が居ないのが嬉しいだなんて
…赦せない。
よーし、今夜は
不眠不休の刑だ!」

 ぎゃーーす……


 我思う。

 この人
 どんだけメンドクサイんだ!



 ところが__
 そんな年始、初仕事から帰るなり私に珍しく頼み事をしてきた。

「トーコぉ…」
「ど、どうしたんです、一体?」

 お腹でも壊したんだろうか。
 朝出したアレ、ちょっと古かったし。


 などと思い巡らす私に、彼は弱々しく訴えた。


「俺を、俺を助けてくれ!」
「ほぇ?」
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