夫の教えるA~Z
 ____

「ホー…『社員旅行』でスキー場へと」

「ウン、松田(※アキトの部下)のヤツがさ。
『もっと社員との交流を深めるべきです!』って張り切っちゃって…ムグムグ」

 ちょっと遅めの夕食時間。

 本日のメインディッシュ、スパイシータンドリーにがっつく傍ら、彼は私に説明をした。
 
 ウーン、いい食べっぷりだ。
 眺めつつも、私はポツリとつぶやいた。

「なんかそれ…心配だなあ」
「え、何?」

「あ~、イエ。
 それの何が困るんです?楽しそうでイイじゃないですか」

 コホン。
 
 もう食し終わったらしい彼は、ナプキンでお口を拭くと、咳払いを一つした。

 彼が丁寧に姿勢を正したので、私も吊られて背筋を伸ばす。


「実はな、俺。出来ないんだよ___が」

「え、何?よく聞こえない」

 モゴモゴと呟く彼に、私は一度問い返した。
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