夫の教えるA~Z
「…ちょっと待った。まだ午前中ですが…」
「全く……困った奥さんだ」

ノースリーブの袖の中に、彼は指先を忍ばせた。

「あ…」


私は
またしてもしてやられた。

素肌の上を滑るように、彼の細長い指先が撫でてゆく……

さっきまでの“擽ったい”が彼の言うところの“気持ちよい”に変わってゆく中で、私はボンヤリと考える。


にしても彼、何の本読んでたんだろう。

あんまり関係なさそうだったけど、最初に話してた疑問は、結局解決したのかなぁ…

まさか……
ただ単にワタクシめとスキンシップを諮りたかっただけなんじゃあ…

ないよ、ね。

 
そろそろ昼に差し掛かろうとする時刻。

コーヒーの芳香漂うリビングで、延々と愛を証してくれる、5歳年上のお兄さん。

そのお兄さんの愛情に、心身を融かされてく私。

私はこれから、こうやって彼のペースに慣らされていくの…か…なぁ……


(C おわり)
 



< 19 / 337 >

この作品をシェア

pagetop