夫の教えるA~Z
S シスター・コンプレックス(上)
「何ぃ~~、バイトだぁ~?」
「はい!お姉さんから紹介してもらいまして!」

満面の笑みを浮かべて言う妻に、俺は大きなショックを受けた。

「そ、それは一体、どういう訳だい?何か金に困ってることでもあるのかな?」

ここで慌てふためいては、年上夫のコケンにかかわる。
俺は努めて冷静に、微笑みながら彼女に尋ねた。

「いやあー、そういう訳でもないんですけど…主婦業にも慣れてきたら、お昼が暇になっちゃって。
夏子さんに相談したら、ジムの事務の子が辞めたから、手伝って欲しいって」

嬉しそうに話すトーコ。

くそっ、夏子姉め、余計なことを!

「…赤ちゃんでも出来たら、忙しくなるかなーって思うんですけどね」

チラッと俺の顔を伺うも、そこはサラッとスルーする。
俺は子より、トーコを愛でたい。

「あ、そう。それよりも。
トーコはじゃあ、姉貴のスポーツジムで働くってことか?」

「ええ、そうですけど。何か?」
「いや…何でもない」

夏子姉さんは、ここから少し離れたスポーツジムで、インストラクターをやっている。
< 220 / 337 >

この作品をシェア

pagetop