夫の教えるA~Z
「は?」

何言ってんだ?!この女。

絶句する俺に、姉は勝ち誇ったように高笑いしてみせる。

「オーッホッホ!
だってそうでしょ?合コンの時も今回も。要は自分の魅力じゃ、彼女を惚れ込ませられないって、認めてるようなもんじゃない。
だから彼女が外に進出して、自分よりもーっといい男に取られるんじゃないかって、終始不安がってるのよ」

「ば、…バカな。
そんなワケないだろう?
ふん。能筋ゴリラのお前がどう思おうと、俺、結婚前に女切らしたことないからな。それに今の支社でもバレンタインのチョコの量は一番多いし……ぐはあっっ」

姉のハイキックをまともに鳩尾にくらい、俺は床に座り込んだ。

「…誰が能筋ゴリラよ。
いーい?あんた全っ然分かってない。
ハロウィンの時もクリスマスの時、トーコちゃんがどんな顔して待ってたか、想像したことある?
ハイスペだかなんだか知らないけど。
あんたのそのチャラさが、トーコちゃんをどれだけ不安にさせてるか」

「ぐ、ぐぅっ…、あの時はちゃんと謝っただろ!?
そもそも、トーコは俺にそんなことは一言も言わないぜ?
他人のお前に、俺らの何が分かるってん……
べふっ!」

彼女は、更に俺の頭を踏んづけた。
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