夫の教えるA~Z
ズシンと身体に衝撃が走った。
と思うと、ミシミシと腕が鳴りはじめる。

ウエイトが、急激に増したのだ。

「う…ぐあっ」

ブルブルと腕を震わせながら、何とか重さに反発していると、見知った顔が現れた。


「はぁい、アキト」

「ぐ、ぐわ、あ、ねき……し、死……
………
ぐ、がああっっ」

気合いでバーを戻した俺は、怒号とともにマシンから飛び起きた。


「お前《ま》っ、何すんだ!ヒトを殺す気か!?」

ゼイゼイ息を切らす俺に、姉はしれっとのたまった。

「あらー、アキトならこれぐらいは余裕でしょ?確か自己ベストは体重の倍だって」

「ブランクあんだよブランクが!…ったく、一体いつの話だよ。高校時代と一緒にすんじゃねえ。
……で、何の用だ、暇人め」

「ま、酷い言い様ね。夏子お姉さまが、わざわざ愚弟を呼びに来てあげたのに。
…空いたわよ、春日さんの栄養指導」

「…ああ、そっか。
さんきゅ」

マシンから立ち上がり、掛けてあったスポーツタオルを取ると、俺は汗を拭きながら出口に向かう。

と、
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