夫の教えるA~Z
で、夫婦の寝室___

バスルームから出てきた彼がカチャリと扉を開けた。

 キタ!

鏡台の前でお肌のお手入れをしていた私は、サッと立ち上がり姿勢を正した。

勇気を出して、話を切り出す。

「あ、あのね、アキトさん。ちょっと……お話があるんです」

「何?」
アンニュイな様子で聞き返す彼。やはり疲れているようだ。

「あの……今からの……アのことなんですけど……」
「な、何だよ。改まって」

彼は、少しだけ顔を赤くした。

ドキドキしながら、私は俯いた。

「あのね………その、無理しなくって、いいのデスよ?」
「え…」

彼が目を見開いた。
「あの、いつも…辛そうだったから」

「…知ってた……のか、俺が無理してたコト」

モチロン、私はアナタ様を見つめ続けておりますゆえ!
心の中で祝福の鐘が鳴り響く。しかし私は大和撫子、なるべく淑やかにそれを告げる。

「ええ……私に気を遣って、ずっと我慢しててくれたの……わかってました」

彼は恥じ入るように、目線を下げた。
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