夫の教えるA~Z
ルンルン鼻唄を歌いながら、俺の本日の収穫、すなわち会社の女性の皆さんから頂いたチョコの山を開封していたトーコが、突如、カエルのような叫び声を上げた。
驚いて振り返ると、
「あ…あ、あれ…」
ラグの上にペタンとお尻をついたトーコが、仰け反った姿勢で、包み紙の散らかったテーブルの上を指差している。
「なんだなんだ?…こ、これは!」
思わずそうしてしまったのだろう。
床に投げられていたのは、藁素材の人形、つまり藁人形だ。
ご丁寧にも頭の位置に俺の写真が五寸釘で留められ、そのうえ、どことなく紫がかって色も悪い。
藁の胴体の心臓の位置に、むき出しのハートチョコが入れてある。
トーコが見た途端に放り投げるのも無理はない。そいつは、それほどに禍々しいオーラを放っている。特級呪物といっても過言ではない。
「もー、アキトさんなんのブラックジョークですかこれ」
「これは…」
間違いない。
この、既視感ありまくりのバレンタインチョコは…
「…籠手川(こてがわ)まり子からの贈り物だ」
「こ、籠手川、まり子…!」
驚いて振り返ると、
「あ…あ、あれ…」
ラグの上にペタンとお尻をついたトーコが、仰け反った姿勢で、包み紙の散らかったテーブルの上を指差している。
「なんだなんだ?…こ、これは!」
思わずそうしてしまったのだろう。
床に投げられていたのは、藁素材の人形、つまり藁人形だ。
ご丁寧にも頭の位置に俺の写真が五寸釘で留められ、そのうえ、どことなく紫がかって色も悪い。
藁の胴体の心臓の位置に、むき出しのハートチョコが入れてある。
トーコが見た途端に放り投げるのも無理はない。そいつは、それほどに禍々しいオーラを放っている。特級呪物といっても過言ではない。
「もー、アキトさんなんのブラックジョークですかこれ」
「これは…」
間違いない。
この、既視感ありまくりのバレンタインチョコは…
「…籠手川(こてがわ)まり子からの贈り物だ」
「こ、籠手川、まり子…!」