夫の教えるA~Z
わっしょーーーい、

乗 り き っ た あ あ あ あ あ あ ア ッ !!!

帰り道。
夕暮れの東京駅を目指し、俺はダッシュで地下街を駆けていた。

呪い解除、コンプリートだ。

さてみなさん、俺がいかにして籠手川まり子を説得したか、お分かりいただけただろうか。

無論、あんな歯の浮くような茶番で、手強い彼女が落ちるワケがない。

ちゃーんとタネがあるのだ。

激昂した彼女が、長々と俺の黒歴史、くそ恥ずかしいプロポーズについて吐露していた時。
あの時俺は、彼女が執拗に勧めてきたハーブティーを、後ろ手でブーケの中にぶちまけたのだ。
話の流れからして、今回の茶にも惚れ薬的なものが混ぜてあるのは分かっていた。

あれは…
すごい効き目だった。

何せ、フワリと薫る匂い成分だけで、作った籠手川自身にあれだけの効力を発揮するのだから。

もしあれを直接飲んでしまっていたならば、俺はきっと、3年前の二の轍を踏んでいたことだろう。

ブルッ。
走りながら、俺はひとつ身震いした。

いや、やっぱアイツ才能あるわ。
まさか、薬の効力が切れた後、更に恨まれるなんてこと…ないよな。


少し考え、それからまた思い直す。

いや、やはりそれはない。
俺が彼女に言ったこと、あれは半分は本音(ほんとう)だ。

彼女は怖がっていただけ、
普通の女の子と同じように。

はやいうちに、屋上(あそこ)から外の世界に飛び出すだろう。

だが、あれほどの才能を持つ女だ。

きっとすぐに忙しくなる。俺になんか粘着する暇はないくらいに_____

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