夫の教えるA~Z
で、当の変態(ほんにん)はといえば、向こうのほうで、大阪支社関連のお偉いさん方と談笑中だ。

会社関連のセレモニーにおいて彼は、人とのパイプを作るチャンスを決して逃さない。
野心家なのだ。

と、さっきの悪口娘の軍団がジリジリと彼に近づいてゆくのが見えた。

あ、変態(あいつ)何か話しかけてる。

あ…何か誉めてる。

あ、こらバカ口説くなぁっ。

口説かれている女が、チラチラこちらを見ながらニヤニヤしているのをみると、あれが彼のムダに大きなサービス精神の現れなのだと分かりつつあるなかでも、だんだんとイライラが募ってくる。

(ごめんね、職場の関係上、あのコ達、呼ばないわけにはいかなくってさ。…社交辞令も大変だよね)
花嫁の実果ちゃんが、ドレスを引きずりながら走り寄り、フォローを入れてくれたものの、わたしの気がおさまるわけもない。

不愉快なその場を逃れるため、わたしは肩をいからせつつ、化粧直しに外へ出た。
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