夫の教えるA~Z
X 拗らせ男女の仲介役に任ぜられました

「もしもしトーコか?
すまないが、部屋の仕事机《デスク》に置いてあるはずの書類を届けに来てくれないか?緑の封筒に入ってると思うんだが急…
ほんと悪い、埋め合わせは必ずするから!」

ポロン♪

午後3時。とても急いでいる様子のアキトさんから唐突にかかってきた電話は、あっさりと切れてしまった。


「うーん、困ったな…」

実は私、今家にいないのだ。

私は普段、アキトさんのお姉さん、夏子さんがインストラクターをしているスポーツジムに、週3で入っている。
今日は出勤日ではなかったのだけれど、昨日、急遽入って欲しいとお願いされ、ジムの受付で仕事中なのだ。

実のところアキトさんは、私がここで働くことをあまりよく思っていない。
彼は常日頃、私が外に出ようものなら、たちどころに男達が寄り集まり、揉みくちゃにされるという、謎の妄想を抱いている…

ってな背景もあり、彼にはあえて言わずにいたのだが…
どうやらそれが裏目に出てしまったようだ。

「うーん…」
どうしよう。
さっき水泳教室の子達も全部入ったから、しばらくヒマにはなるけれど、受付《ここ》空けるわけにもいかないし…

頭を悩ませていたところに、レッスンを終えた夏子お姉さんが通りかかった。

「トーコちゃんお疲れー。
…ん、どうかした?」

「あ、夏子さん。それが…」

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