夫の教えるA~Z
「ちょっとアキトどういうことよ!?
松田の年会費分を賠償しろだなんてっ」

怒号ともに開け放たれるドア。

松田は菜箸とフライパンを両手に、ポカンと口を開けた。

「な…つこ…さん?」

対する夏子は、一瞬面食らった顔をするも、ええいと顔を横に振り、構わず俺の方にズカズカと向かってきた。

そうして____

バッシーーンンッッッッ!!!

ああ、やっぱりな。

予想通り、強烈な一発を右頬に食らった。
真っ向からそれを受け、1、2m後ろに吹っ飛んだ俺は、思い切りソファに倒れ込んだ。夏子の後ろにいたトーコが痛そうな顔をして目を閉じた。

夏子はそのままの勢いで、俺を怒鳴り付ける。

「あんたが何かたくらんでることなんか、初めから分かってたわよっ。いい?私は分かってて、あえて来てやったのよ。
松田!
あんたも、あんたよ。疑いもせずのこのこ来るんじゃないわよ。
コイツはね、昔からこういうやつなの。
狡猾で、生意気で、デリケートな、人の触れられたくないところを平気でほじくり返す…ハアッ、ハアッ」

松田といえば、カッと目を見開き、驚愕の顔のまま、怒り狂う彼女を凝視している。

一息ついた夏子は、その松田から目を反らすと、急に恥かしそうに顔を赤くして、塩垂れた。
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