夫の教えるA~Z
「え~、だって。こないだ飲んだ時姉ちゃんが言ってたじゃねーの。松田にあんなこと言って後悔してるって。だから俺は、ちゃんと謝る機会を与えてやろうとしたんじゃねえか。姉ちゃん前言ってたじゃねえか。悪い事したと思ったら、ちゃんと謝んなさいって。それをぶん殴るなんて…マジで引くわ。…イテテ」
「はあぁ?前って一体いつの昔よ!大体あんたっていつもそう。人の気持ちなんて全く考えないで、正論ぶって、直線で動けばいいと思ってる。…とにかく、こういうこと、ホントにやめてよね。ムカつくし、…彼にとっても迷惑だから」
「松田《アイツ》にとっての迷惑なんて、どうして姉ちゃんが勝手に決めんの?それこそ他人の気持なんて考えてねえじゃん」
「そういうの、詭弁っていうのよ。世間的に考えてもわかるでしょ?アキトだって困るでしょ。10以上も歳上の女が、”あんなふうに言ってくれて嬉しかった”だなんて真顔で言ったら、男は普通”げっ”ってなるし、キモイし、重いし…あ…」
計らずも、後ろのトーコと目が合った。
互いの顔を見、ニンマリ笑う。
俺の目線を追いかけて、夏子がトーコを振り向いた。
「…あんたら、担いだのね」
ぎくりとしてトーコが夏子から目を逸らす。ならない口笛を吹く真似をしている。なんて典型的な奴だと呆れつつも、夏子の怒りが彼女に向かわないよう、さらに煽ろうとしたときだった。
「夏子さん、それってどういうことなんですか?」
「え……ひゃっ」
いつの間にか、松田が夏子の横に立っていた。フラフラと惚けた様子で近づいた松田は、ヒートアップしていて全く気付かない様子だった夏子の両手をスッと握った。
「はあぁ?前って一体いつの昔よ!大体あんたっていつもそう。人の気持ちなんて全く考えないで、正論ぶって、直線で動けばいいと思ってる。…とにかく、こういうこと、ホントにやめてよね。ムカつくし、…彼にとっても迷惑だから」
「松田《アイツ》にとっての迷惑なんて、どうして姉ちゃんが勝手に決めんの?それこそ他人の気持なんて考えてねえじゃん」
「そういうの、詭弁っていうのよ。世間的に考えてもわかるでしょ?アキトだって困るでしょ。10以上も歳上の女が、”あんなふうに言ってくれて嬉しかった”だなんて真顔で言ったら、男は普通”げっ”ってなるし、キモイし、重いし…あ…」
計らずも、後ろのトーコと目が合った。
互いの顔を見、ニンマリ笑う。
俺の目線を追いかけて、夏子がトーコを振り向いた。
「…あんたら、担いだのね」
ぎくりとしてトーコが夏子から目を逸らす。ならない口笛を吹く真似をしている。なんて典型的な奴だと呆れつつも、夏子の怒りが彼女に向かわないよう、さらに煽ろうとしたときだった。
「夏子さん、それってどういうことなんですか?」
「え……ひゃっ」
いつの間にか、松田が夏子の横に立っていた。フラフラと惚けた様子で近づいた松田は、ヒートアップしていて全く気付かない様子だった夏子の両手をスッと握った。